大村市|― セルフトーク(自分への言葉かけ)で痛みを整える ―
- 勝仁 林
- 2月6日
- 読了時間: 4分

目次
慢性的な腰痛や肩こり、首の痛みなどが続くと、
「この痛みは治らないのでは」「また悪化するのでは」「動かすのが怖い」
といった不安が強くなることがあります。
こうした状態が続くと、実際の体の状態以上に痛みを強く感じやすくなることが知られています。その背景には、脳や神経の働きが関係しています。
痛みは「体験」である
痛みの考え方は近年大きく変化しています。**国際疼痛学会(IASP)**では、痛みを次のように定義しています。
痛みとは、実際または潜在的な組織損傷に関連する、あるいはそれに似た、不快な感覚的・情動的体験である
この定義が示すように、痛みは単なる身体の感覚ではなく、**感情や思考を含んだ「体験」**です。
つまり、不安・恐怖・過去の経験・注意の向け方などが、痛みの感じ方に影響することがあります。
なぜ慢性痛は「過度に」感じやすくなるのか
脳は、注意を向けた情報を重要なものとして処理します。
・痛みに意識を向け続ける・「危険かもしれない」と考え続ける・何度も痛みを評価する
こうした状態が続くと、脳は「この痛みは危険なものだ」と学習し、実際の組織状態とは別に痛みを強めて感じやすくなると考えられています。
このような仕組みは、近年の神経科学研究でも示されています。
慢性痛を過度に感じなくするための鍵「セルフトーク」
セルフトークとは、自分自身に向けて無意識・意識的に行っている言葉かけのことです。
例えば、
「また悪くなった」「もうダメかもしれない」「動いたら壊れそう」
こうした言葉が頭の中に浮かぶことは珍しくありません。
しかし、このようなセルフトークが続くと、不安や緊張が高まり、体は防御的に固まりやすくなります。
セルフトークを「安全確認型」に変える
慢性痛のある方には、安全性を確認するセルフトークが役立つ場合があります。
例)
・「今の動きは大丈夫そう」・「少し動けている」・「痛みはあるけど、危険なサインとは限らない」・「ゆっくりなら動かせる」
ポイントは、ポジティブになりすぎる必要はなく、事実ベースで安全を確認することです。
文献から分かっていること
近年の研究では、
痛みの捉え方を変える教育
認知(考え方)へのアプローチ
自己効力感(対処できる感覚)を高める支援
が、痛みの感じ方や生活機能に影響することが示されています。
セルフトークは、これらの要素を日常生活で実践するための具体的な手段の一つといえます。
セルフトークを取り入れるコツ
痛みが出た瞬間に気づく
頭に浮かんだ言葉を書き出す
より現実的で安全な言葉に言い換える
例)「動くと悪化する」→「急に動かさなければ大丈夫そう」
この作業を繰り返すことで、脳は「この動きは安全」という情報を学習していきます。
施術とセルフトークはセットで考える
整体やリハビリでは、体の動かしやすさを整える施術を行います。
そこにセルフトークを組み合わせることで、
・安心して体を動かしやすくなる・過度な緊張が減る・日常動作への不安が下がる
といった変化が期待できます。
また、痛みに対する整体では、施術そのものも大切ですが、それと同じくらい「痛みを自分がどう受け止めているか」も重要になってきます。
痛みを「危険なもの」「避けるべきもの」と強く捉え続けると、体は防御的に固まりやすくなります。
一方で、「今の動きは大丈夫そう」「少しずつ動けている」といった受け止め方ができるようになると、体は必要以上に緊張しにくくなり、動作が行いやすくなる場合があります。
当院では、施術によって身体の状態を整えるだけでなく、痛みに対する捉え方や、安心につながるセルフトークの考え方についても必要に応じてお伝えしています。
施術とセルフトークの両面から取り組むことで、生活の中で「痛みが気にならない時間」を少しずつ増やしていくことを目指します。
まとめ
慢性痛は体だけでなく脳や心理面も関与する
痛みに向ける注意や言葉が、感じ方に影響する
セルフトークは慢性痛を過度に感じにくくする一つの対策
安全確認型の言葉かけを習慣化することが大切
慢性痛と向き合ううえで大切なのは、「痛みをなくそう」と必死になることではなく、安心して生活できる時間を少しずつ増やすことです。
引用文献(簡単解説付き)
1. Raja SN, et al. (2020) The revised International Association for the Study of Pain definition of pain. Pain. → 痛みを「感覚+情動を含む体験」と再定義した国際的基準。
2. Moseley GL, Butler DS. (2015) Fifteen years of explaining pain. J Pain. → 痛み教育や考え方の変化が行動や痛み体験に影響することを解説。
3. Wiech K. (2016) Deconstructing the sensation of pain. Science. → 認知や注意が痛み知覚を変化させる脳メカニズムを示した研究。





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